華の大学生時代、僕はモテなかった
失礼
「僕達」はモテなかった。
大学生活は長い。4年もある。そして自由だ。時間がある。 行動すれば出会いだって格段にあるだろう
なのにモテなかった
信じられない。4年間で彼女がいた時間が「1日」もないのだ。 そんな事があっても良いのだろうか。しかも全員がDream Theaterrだ。 でも彼等のように(夜の)パフォーマンスで超絶技巧を披露するような チャンスもない。ジェイムズだって笑ってはくれないだろう
12/25
そんな僕達に訪れたのは12/25クリスマス。
集ったのは4人のDragon Thunder。 何か見てるだけで恥ずかしい。小学校の時に買ってしまった黒い龍が印刷された裁縫道具のような男達。ある種「 奇跡の世代」と言えるだろう
緑髪の山本は動画のどこからでもシュートを放てるし
黄髪の山田は男の動きを完全模倣(パーフェクトコピー) 出来る
赤髪のしげは本場仕込みの日本人離れした飛距離を持つし
かくいう僕ももう一人の赤髪にとして、 あまりの切り返しの激しさにアンクルブレイクを起こす( 自分が)
かくして最強の四人は、ボロい軽自動車に乗り 込んだ
今日の僕達は、きっと無敵だ
神社
時刻は25日0時ジャスト。 クリスマスの始まりに向かった先は神社だ
まさか神社の神も25日に来るとは思うまい。何がキリストだ。 こっちの気分はとっくに謹賀新年だ
深夜の神社はシン、と静まり返っていた
冷たい空気と合間って、空気が張り詰められている。 どこか神聖な雰囲気があった
そんな中を
「こんなステージ戦国無双にあったよな」
「ああ、あったあった」
「初代戦国無双の城内戦ってクソ過ぎだよな」
「わかる。何か燃えるし」
と男達が歩く。
「お賽銭いくら入れる?」
「100円」
「ガチかよ、引くわ」
「こんなもんだろ」
「俺も100円。なんといってもクリスマスだからな」
「じゃあ俺も」
「そこまで言うなら俺も5円のところ50円にしよう」
「お前だけ恩恵半分だな」
「こういうのは金額じゃねーから。気持ちだから」
わちゃわちゃしながらお賽銭を投げ入れ、神に願った
((((彼女が出来ますように!!!!!))))
嗚呼、神よ、僕達の願いを聞いてくれ
海
男達はそのままの勢いで海に向かう
冬の海は入らなくても滅茶苦茶寒い。死んでしまう。 山本は何故かクロックスで来ていた。真冬なのに。アホなのか?
海辺を歩く男達
海辺の空気は澄んでいて、波のさざめきが聞こえてくる
その冷たい空気をめいっぱい吸い込むと、磯の香りが通り抜けた
派手なイルミネーションどころか街灯1つない。しかし空を見上げれば星空
これはこれで悪くない
でも、隣に居るのは男男男
「なあ」
「あー?」
「・・・・・・俺達彼女出来んのかな?」
「あー……」
「おわっ!」
山本が叫び声を上げた。
水の中に足を突っ込んだらしい。真冬に。しかもクロックスで
「足の感覚が……ねぇ!!」
……アホなのか?
寒さに負けて車に戻る。 海辺には同じように車が数台止まっていた。恐らくカップルだ
彼等が男四人の僕達を見て何を思うのか、
コンビニ
逃げるようにコンビニへ
コーヒーでかじかんだ手を温める
店を出てゴミ箱の前でそれを飲むと、少しの間だけじんわりと内側が暖かくなった。
深夜のコンビニ。暇そうな店員と僕達意外に人影はない
はぁ、と吐き出した白い息がクリスマスの空に溶ける
店を出てゴミ箱の前でそれを飲むと、少しの間だけじんわりと内側が暖かくなった。
深夜のコンビニ。暇そうな店員と僕達意外に人影はない
はぁ、と吐き出した白い息がクリスマスの空に溶ける
ホント、何やってんだろ・・・・・・
「おわ!!」
何だか気分が沈み始めた時、仲間の1人が声をあげた。何だ? と振り返ると、でかいフィギュアを持って店から出てきた
「・・・・・・え?」
「・・・・・・何それ?」
「・・・・・・当たった」
――クリスマスの奇跡は、あったんだ
思わず笑う
唖然としながら出てきたそいつを囲む
「よかったな。きっと神社でお願いしたから神様が彼女くれたんだ」
「彼女ってコレなの!?」
「うわ羨ましい~~~~。俺はいらんけど羨ましい~~~~。確実に要らんけど」
「お前だけ効果出るとかずりーよー。要らんけど」
「いいなー。そこはかとなく要らんけど」
「さっきの分のお願いこれで終わり!?」
「まあ、終わりだろうな」
「賽銭ケチるから」
「その800円神様に入れときゃいいのに」
「50円返せ!!!!」
夜が更けていく
コンビニの駐車場、男達の笑い声はいつまでも クリスマスの空に響いた
おわりっ